私見的戯言14001
某ブログからの引越しです。 ISO関係のグチやら何やら・・・・
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緊急事態を「特定」する。

「前回は『緊急事態とは何か』ってぇ話で」

「要するに、何はさておき『緊急に動く必要があるもの』が緊急だってことだ」

「例えば『騒音』なんてぇヤツにも緊急事態はあるんでしょうかねぇ?」

「ウチの人間が『騒音の緊急事態対応訓練』と称して『騒音計による測定』ってのをやろうしてたから『アホかお前は』と叱ったことがあるよ。と、言うか実際の『騒音の緊急事態』を経験したことが無いから、そういう発想になるのかも知れないがね」

「実際の、ですかい?そいつぁあっしも経験ないですねぇ」

「私の経験から言うならば『騒音の緊急事態』ってなぁ『周囲からの苦情』なんだよ」

「『工場の騒音がウルサイ』ってヤツで?」

「騒音ってヤツが水質や大気なんかと違って厄介なのは『この数値なら大丈夫』という絶対的な閾値がないことなんだ」

「そりゃ確かに近隣の住民からしてみりゃぁ80dBも78dB『ウルサイことに変わりない!』でしょうしねぇ」

「80dBと78dBでは発生しているエネルギーとしては100倍違うんだけどね。でも騒音ってのは官能的な評価をされるものだから『苦情イコール数値オーバー』という式が成り立たない。いくら数値を守れていてもダメな時はダメなんだ。それが騒音問題の厄介なところだよ」

「数値の問題じゃない、と」

「結果として『何か対応した』証拠を残すためにデータをとる事自体に問題はないが、『緊急』という定義が『数値』とは限らないという事を理解しておかないとな」

「それを聞いて思い出しやしたが・・・ガキの小学校で身体を鍛えるために、お昼に全学生で学校の周囲を走るってのをやってたんすよ。そしたら近所の家から『丁度その時間に赤ん坊を寝かしつけているで、バタバタされると困る』ってんで申し入れがあったとか。んで、結局コースを変えたって聞きやしたよ」

「そういうのを聞くと、まさしく『環境側面』だなぁって思うよ。何しろ環境側面の定義は『環境(3.5)と相互に作用する可能性のある、組織(3.16)の活動又は製品又はサービスの要素。』だからさ」

「以前にご隠居が言ってた『砂漠の真ん中なら爆音だって無問題だが、クラシックコンサートだったら、クシャミだって大問題だ』ってヤツで」

「その通り。小学生のマラソンの走行ルートなんて、そこに『赤ん坊が寝ている』という『環境』でもなければ特に意識する必要もないことだからね。まさしく相互作用だよ」

「そう言うのぁ『点数評価』でどうこうってぇモンじゃねぇですし」

「『緊急なものが緊急』としか言いようがないな」

「だったら何で『緊急事態は得点で決まる』なんて馬鹿話が出来ちまったんでしょうねぇ」

「私が思うに、だ。それは規格にある『組織は、環境に影響を与える可能性のある潜在的な緊急事態及び事故を特定するための、またそれらにどのようにして対応するかの手順を確立し、実施し、維持すること』という文章の『緊急事態及び事故を特定するための・・・手順を確立し』という文章に起因すると思っているよ」

「『緊急事態を特定する手順』だから『何が緊急事態なのか』を公式で出す、と?」

「毎度のことだが緊急事態ってモノを肌で感じたことが無い人間の発想だよ、それは」

「んじゃぁ仮に『手順』が点数や公式じゃないってんなら『緊急事態を特定する手順』ってのは何なんで?」

「あのなぁ、八っつあんや。企業にとって『緊急事態』ってのは放置しておいて良いことかい?」

「いや、そりゃないでしょう。放置して良いんだったら、そいつを『緊急』たぁ言わんでしょうし」

「だったら、『発生と同時に』ただちに対処が必要だよな?」

「そらまぁ、『応急緩和処置』ってなぁ規格要求そのものですし」

「なら、だ。最も大事なことは『緊急事態が起きている事をイチ早く認知すること』じゃないのか?」

「マンガなんかでアリガチな『緊急事態発生!!敵機接近っ!』みたいなヤツで?」

「そういう事だ。まぁマンガならそうだろうが、実務において『緊急事態が起きている』のを瞬時に気がつくってなぁ、実は簡単な話じゃないんだよ」

「そうなんで?」

「例えば前回話をした電気の使用における『デマンド・オーバー』だけどね」

「電力会社と契約した『時間当たりの最大使用量』ってヤツで」

「うん。それで、電力会社との契約値が仮に時間当たり1000kwだったとしようか?この時、『今使っている電力量』が999kwなのか、1001kwなのかってのは、電線や機械の稼働状況を見て判断できる話じゃないだろ?」

「まぁ、『何と無く』ってくらいしか分からんでしょうねぇ」

「だが、電力会社は契約にとてもシビアだから例え1kwでもオーバーがあれば見逃してはくれないよ。だから、何もしないままで『いつの間にか超過』していたって話になると、契約の更新だの違約金だのと大変な始末になる」

「んでも、ウチの会社のヤツらは何してるか知りやせんが『事前に』察知してるみたいですよ?だって『危なそう』になったら走り回ってんですから」

「そういう電気を沢山使う会社はチャンと『電力監視(制御)装置』ってのを持っているからね。使用電力が危険水域に達したら警報が出るようになってるんだ」

「へぇ。良くできてることで」

「けど、それが出来てなかったら『緊急』を越えて『事故』になるからな。それは防止しなきゃならん。この時、『電力監視装置を使って契約超過の危険を察知したら警報を出す』というシステムがつまり『緊急事態を特定する手順』に相当するんだよ」

「『緊急事態を特定する』ってのは『そっち』の意味ですかい」

「環境とは直接は無縁だが、例えば『火災』は立派な緊急事態だが、誰も見ていない場所での火災はどうしても発見が遅れるから大火事に発展する危険があるだろ?だから大きな工場やデパートなんかは元より、最近は住宅でも『火災警報器』が設置されてるじゃないか」

「あぁ、そういうのも『火災』ってぇ緊急事態を『特定』するための手順ってことで」

「気がついたら工場や家が全焼してました、では話になるまい?緊急事態ってのは『如何に早く発見するか』が勝負なんだよ。それが『管理』なんだ」
※画像参照
緊急事態(火災)を特定する手順


「あっしらも緊急事態の訓練と称して油の吸着マットを敷いたりしてますがね。確かに言われてみりゃぁ、そもそも『油がこぼれた』ことに気が付かなかったら話にならねぇんで」

「吸着マット対応は応急処置として必要な話だが、それ以前に『油がこぼれたことを察知』しないと、そもそも対応が出来ないからな。それに、例えば排水処理をしている事業者の場合だったら『処理不全』を起こして未処理の排水が流出する事故だって想定されるな」

「あるでしょうねぇ・・・てか、排水施設を長くやってる事業所で『身に覚え』がないところなんて無いんじゃねーか、と思いやすが」

「今はもう『そんな事』はないが、ウチも昔は結構『いい加減』だったしなぁ。朝、排水施設を覗いてみたら処理が出来てなくって水槽が『真っ白になっていた』なんてことがタマにあったんだよ。んな時ぁ頭の中まで『真っ白』さ。よくもまぁ毎度々外部に流出せずに済んだものだと感心するがね」

「『処理不全』ってなぁ発見しにくいって言いやすよね」

「だからウチでは独自に技術開発・・・というほど大げさなモンじゃないが、システムを組んで『処理不全発見器』を取り付けたよ。異常があればすぐに警報が出て自動で処理を中断するんだ」

「なるほど、そういうのがあれば発見も早いことで。んでもフツーは、そんな機械は無いですし」

「となると、後は『抜き取り検査』方式にはなるが、『日常点検』とかで水槽を確認したり、放流口を見るしかない。この場合はどうしたって発見は遅れるが、それでも『見ない』よりゃぁ遥かにマシだ」

「つまり、『処理した水槽を毎日見て異常の有無を確認する』ってのも、実は水質の『緊急事態を特定する手順』のひとつって話で」

「ぶっちゃけ、そんなのは昨今は環境問題に対する世間の風当たりが強いから何処の会社でも『当たり前にしている事』なんだがな。それを『そういうモノだ』と認識するかしないかだけの違いじゃないかな」

「ところで、ご隠居の会社は水質の『処理不全』を何で『点検での確認』じゃなくって『機械監視』にしてるんで?カネ掛かるし装置のメンテが大変じゃないんで?」

「確かに装置にはカネが掛かるし、メンテにも気を使うな。けど、その代わりに発見も対処も早くなるから『傷』が浅くて済むだろう?何でもそうだけど、より良い効果を期待してコストにしろ手間にしろ飲めるモノは飲んで行くんだよ。それがつまり『継続的改善』ってヤツなのさ」









コメントありがとうございます。
ライブドア版の(ほぼ)日刊私見的戯言14001でもそうですが、タマに匿名のコメントを頂くことがあります。
おそらくは控えめなご性格の方でいらっしゃるのだろうと推察いたしますが。

どちらにしてもコメントを頂くのはとても嬉しいものです。
何しろ、ただでさえマイナーなテーマでのブログの上に、最近は14001規格というより環境管理実務の手引書みたくなってますしね。
なので、どーしても興味を持ってもらえる方が限られる、という。
まぁー仕方ないって言えば仕方ないんですが。

最近はもう開き直ってまして、「いいや。100人に1人でも『これは!』と思ってもらえれば、それで」と腹をくくってますw
なので、そうした弩マイナーなテーマで「参考になった」とコメントを頂けるとホントに嬉しいですね。
最近では一言、「すごく納得しました」ってのも頂きましたが。
そうやって励まして頂けると更に(調子にのって)「よっしゃぁ!また書くぞー」という気になるものです。
ありがたや。

当ブログでは(他の同志ブログでも同じですが)、別に固定されたメンバー間だけでの情報交換というシロモノではありません。完全にオープンなものです。メルアドの登録も友達紹介も顔写真も本名も不必要です。
ですから、どうぞお気軽にコメントをくださいませ。何でしたら拍手コメントにして非公開設定にして頂ければ表に出ないようにすることも可能です。
同志諸氏や他のコメンテータ各位に対する中傷に類するものでなければ、原則的にすべてご返答申し上げるのが当ブログのコミニュケーションに関する「方針」ですw

何処かで誰かの、ホンの少しでも「考えるキッカケ」になれば、幸甚に存じます。
ではでは。


                     名古屋鶏拝




何にでも「緊急事態」はある。

「なぁ八っつあん。以前にもそんな話をしたんだが、そもそも『環境マネジメント』なんてモノはありはしない、というのが私の考えなんだ」

「確か、『環境』と一括りにするのが間違いとかで」

「そうだね。『環境』という言葉は例えるなら『学校』みたいなもので『総括した言葉』、つまり『概念上のくくり』なんだよ。だから実際には『水質管理(マネジメト)』とか『エネルギー管理』である、ということだな」

「審査員のヤツらはよく『品質をよくすれば環境も良くなるのです』なんていいやすけどね」

「馬鹿げた話だよ。品質改善をしたら騒音特定施設の届出が確実になるかい?水質が基準値をクリアするだろうか?土壌に有害物質が浸透するのが防止出来るってのかい?あり得ない話さ」

「まぁ本質的な意味での『品質』にゃぁ無関係なこって」

「捉え方ひとつ、という考え方もあるんだけどね。それらも含んで『仕事の品質』と言えなくも無いというのが審査員のご説なんだろうが、だからと言って『本来の意味での』製品に関わる品質の仕事さえしていれば全てがOKというワケじゃぁないんだ

「それはそれでチャンとやらねぇと」

「だと思うんだよ。私はどちらかというとシステマチックな考え方をする方だから余計にそう思うのかもしれないがね」

「そう言えばご隠居は随分前にも『水質にも騒音にもエネルギーにも、それぞれ方針やら緊急事態がある』って言ってやしたね」

「もっと言えば、『エネルギー管理』も実際には『電気の管理』であり『燃料油の管理』であったり『水道利用の管理』や『燃料ガスの管理』があったりするんだ」

「そんなに細かいモンで?」

「ウチの工場はエネルギー消費量が大きいからね。こられを総括して管理するとワケが分からなくなるんだよ。『確実な管理』を目指すのなら、全てを細かく分けて考えないとな」

「面倒クセー気もしやすがねぇ」

「これは私の持論だが、『大きな問題というのは、小さな問題の集合体で出来ている』と思うんだ。つまり、一見して取り付くシマの無いような難問でも、ひとつずつ分解していけば、一個々は他愛もない問題だったりするんだよ。それが合体しているから難問に見えるだけで」

「それとコレがどういう関係で?」

「逆もまた真なりってコトだ。ひとつずつなら簡単な問題でも、『それ』をひとまとめにして取り扱おうとすると反対に『難問』に仕上がってしまう恐れがあるっことさ」

「なるほどねぇ。んでも例えば『電気の管理』なんてぇモンに『緊急事態』なんてあるんで?」

「その前に、だ。まず大事なことは『緊急事態とは何か』ってことなんだ」

「昔、どっかの審査員が『え〜緊急事態とは環境側面を点数で計算して〜』とか言ってやしたけどね」

「間抜けた話だよ。そういうのは所詮、『ISO用の』緊急事態だ。実際の緊急事態とは、文字通り『顔が真っ青になって走りまわないといけない』事態のことだ」

「あっしの工場でも、工場の側溝に油が流出した場合なんかを想定して油の除去訓練なんかをしてやすけどねぇ」

「水質は確かにそれがイチバンだろうな。だがさっも言った通り、それだけが緊急事態というワケじゃない。こっから先は実務経験のある人間にしかピンとこないだろうが、例えば電気で言うなら『それ』の一番は『停電』だよ」

「あぁ、確かに。停電するってぇっと、モノによっちゃぁ機械がヘンなところで止まるモンだから壊れる危険があるって聞きやすけど」

「樹脂成形や鋳造なんかをしている会社にとっちゃぁ、ヘタすると金型ごとダメになる事もあるしな。そしたらモノによっては数百万円からの損失になっちまう。それ以外にも例えば最近の保冷剤に使われている、純水を作るためのRO(逆浸透膜)設備を導入している工場もある。ROの機械は停電すると高圧がかかって高価な膜を破壊するし」

「大型の工場なんかの空調に使う冷温水発生器なんてぇ機械も停電には弱いらしいっすねぇ」

「アレもいきなりは止まらないからな。ヘタすれば壊れるな」

「工場で水銀灯を使ってたりするってぇと、停電して5分くらいは再点灯できねぇし・・・、精密機械を組み立てるクリーンルームなんかは停電すると清浄度を維持出来なくなるとか何とか・・・。そうやって言われると、確かに停電は『緊急事態』で」

「だろ?そういうのが本来の『緊急事態』なんだよ」

「そんなのぁ、別に点数でなくたって『当たり前』ってところでしょうけど」

「だが、その『当たり前』がやったことの無い人間には分からないんだよ」

「だから『点数』なんかに走る、と?」

「じゃないかな。何しろ知らないんだから仕方ない。それから『電気』で言うなら他にも大きな『緊急事態』があるぞ?」

「へ?と言いやすと?」

「ホラ、この前に八っつあんが自分で言ってたじゃないか。『デマンド・オーバー』だよ」

「あぁ、工場で使う電気が電力会社と契約した『最大電力値』を超える、ってぇヤツで。確かに真夏になるってぇと動力課の連中が『使ってない電気を消してくれ〜』って叫びながら走り回っていることがありやすぜ」

『走り回る』イコール『緊急事態』じゃないのか?」

「そりゃそうで。しかし大丈夫ですかい?話が段々と専門的っつーか、マニアックになって来てやすけど?」

「それはそうだが、現実の役に立たせることを考えるなら、それも仕方のない事だと割り切ってるよ。何しろ例えば『電気』で『結果を出す』管理をするのであれば『緊急事態とは何か』を確実に定義しないと話にならないからね」

「電気の場合だと緊急事態は『停電』と『契約超過』の2つって事で?」

「いや、それ以外にも『漏電』とか『感電』とか『電線の過熱』や『電気火災』、『ブレーカのトリップ(自動遮断)』なんかも、その部類に入ると思っているよ」

「随分、色々とありやすね」

「ひとたび事故が起これば生産が止まっちまうし、ヘタすりゃ人身にも関わる。だから管理をしっかりしないとな。そのための第一歩は『何が緊急事態なのか』をチャンと定義して、『何がトリガーを引くのか』という『環境側面』を特定した上で、『それぞれの問題』について『どう防止するのか』を個別に考えることだ」

「上の連中は『チャンとやっとけ!』と一言で終わりなんすけどねぇ」

「『それ』なら『それ』でもいいんだろうけど、その場合には『何が』チャンとした管理なのかを、それこそ『チャンと』教えておかないとな」

「人間が機械に完璧を求めると・・・じゃないっすけど、上司が部下に完璧を求めるってぇと、今度は上司が完璧じゃねぇとダメってことで」

「上司だから勉強しなくていいという理屈はないからな。でないと組織の力量が向上することは有り得ないと思うんだ」

「話しゃぁ戻りやすが、電気の管理ってぇと、まず『省エネ』ってイメージっすけど」

「現実には省エネの前にまず法律を含んで事故を起こさないことが大前提だよ?話はそれからだ。次に契約超過の問題と立ち向かう必要があって、それから停電時の対策とつながって・・・最後に、『それらの条件をクリアした上で』、省エネ計画を考えないといけない。でないと、それこそ砂上の楼閣だ」

「『利害関係者の見解』とか『適用可能な法令の参照』とか『運用上の事項の考慮』ってぇヤツですかねぇ」

「ISO用語的に言うなら、そういう事だ。もっとも、そういう『優先順序』ってのはISO審査員のように実務経験者でない人達には実感はしないかも知れないけどね」







緊急事態の防止。

「ねぇご隠居。ISOの雑誌なんかを見ていると『ISOで品質UP!』とか『儲かるISO』なんて特集がありやすがね。あっしゃぁ、どうしてもISOで『何かいい事がある』とは思えないんですがねぇ」

「ほう、そうかい。で、なんで『何かいい事がある』と思えないんだい?」

「いや、そりゃぁアレでしょう?あの審査のバカバカしさと来たら!最近なんざぁ規格とは全く関係ない品質改善の話しかしねぇんですぜ?アイツら」

「審査の現状が酷いのは兎も角としてもだ、確かにISO規格に従って仕事をしたとしても、それによって品質が上がったり利益が出るというのは考えにくい話だな。むしろその逆で、チャンと安定した品質の製品を出して堅実に利益を出せる体質であることが『適合』と言えるんじゃないかと思うよ」

「『あべこべ』ってんでしょうかねぇ」

「大きな円(堅実な企業体質)の中に小さな円(規格適合)を描く事ができるからと言って、小さな円(規格適合)だけを描いたら『自動的に外側に大きな円(堅実な企業体質)が出来る』というワケじゃないからな」

「んじゃぁ、とどのつまりがISO規格には意味はねぇ、と?」

「まず、『ISO規格』と我々が本来やるべきである『環境管理』というモノを分けて考えなきゃぁいけないよ。我々が実務でやっているのはISOじゃなくって飽くまで『環境管理』だからさ。ISO規格はその環境管理の方法についての要件を定めているだけだ」

「ってこたぁ、環境管理自体には意味があるんで?」

「これも程度問題でな。極端な話、自営業クラスの会社で細かい文書管理なんかしたって無意味だし、逆に大勢で取り組む場合には適切な文書管理が必須になるし」

「そりゃそうでしょうねぇ。実際問題、どっかの高速バスみてぇに事故さえやらなけりゃぁ管理がどうのとか帳簿がどうの、なんて誰も何も言わねぇでしょうし」

「なぁ八っつあんや。環境でも同じことなんだが、結局のところ『管理』を充実させる最大の利点は『緊急事態の未然防止』じゃないかと思うんだよ」

「事故を防ぐって事で?」

「そうだな。まぁ『事故』とは限らないけどね。とにかく如何に緊急事態というか非常事態にならないようにする、或いは『なった時に如何に被害を最小限度に留めるか』ってことだ」

「BCM?ってんすかねぇ、確か『事業継続なんちゃら』なんてのがあったような気がしやすけど」

「アレの主眼は天災対応なんだが、要は同じだよ。事故や緊急事態が起これば事業がストップしてしまうし、ヘタすりゃぁ会社そのものがツブれる恐れもあるからな」

「会社が無くなっちまえばコスト削減も無意味ってことで」

「管理費をケチって必要な帳簿を作らなかったり、人件費をケチって長時間労働させたり、果ては日本語が充分喋れないようなドライバーで長距離を走らせたりすりゃぁ、事故があっても不思議はないわけだ」

「あの会社もアレで確実に倒産でしょうねぇ。あの始末じゃぁ、もう誰も乗らねぇでしょうし」

「そうした危機管理というか事故防止の意識ってのは、日本の企業には低いと思うね。何しろそうした管理コストってのは事故が無ければ不必要な、言ってみりゃぁ掛け捨ての保険金みたいなモンだからね」

「絶対に要るってぇモンじゃねぇっすから、ムダ金に見えちまうしょうかねぇ」

「私は以前に、ある人から『企業は最善を尽くす前に最悪に備えなくてはならない』と言われたことがあってね。以来、何かにつけて思い出すようにしてるんだ」

「ご隠居にしちゃぁ殊勝なことで」

「何しろ世界的なコンサルティング企業であるマッキンゼーの元社員の方だからね。重みが違うよ」

「『グローバルな視点』ってヤツで見たら、そういうモンなんでしょうねぇ」

「某バスの事故にしてもそうだが、運転手に必要な力量がなかったのは明らかだし、必要な人的資源の供給も不足していたし、教育訓練も怠っていたと聞くし、必要な文書も無かったり、法的に定められた点呼・・つまり内部コミニュケーションも無かったとか。そうした『管理の要素』が欠落したことが、結果として大きな事故に繋がったと言えるんだ」

「つまり逆に言やぁ、そうした『管理の要素』があれば事故が防げるってことで?」

「ゼロとは断言出来ないにしろ、発生する確率を大幅に下げることは出来るだろうね。それが『管理』ってモンだよ」

「けど、『ゼロに出来ないんだったらヤル意味は無ぇ』ってんで省略するヤツぁ居るでしょうねぇ」

「それはもう、管理じゃなくって博打だよ。けど、所詮は博打だからいくら連勝を続けても何時かは必ず大負けする時が来る。たが、誰だってスッた後には必ず『あそこで小銭を惜しんだばっかりに』と後悔するんだよな」

「『後悔先に立たず』ってヤツで」

「『それ』を先に『立たせよう』ってのが『管理』なんじゃないかなと思うんだ。あえて小銭を捨てることで大銭を守るってのかな」

「日本人的にゃぁ馴染みの薄い発想なんでしょうかねぇ」

「日本人は『投機』と『投資』の違いを欧米人ほど分けて考えないからね。どうしても発想が勝負師的なギャンブル(投機)になっちまう」

「話しゃぁ戻りやすがね。『環境管理』をやる最大の利点が『事故防止』だとしたら、ISO規格はどうなんで?」

「ISO規格はさっきも言った通り、環境管理の『仕様書』だ。この時、『事故が起こる(目指す姿から外れる)要素』を体系的に区分して特定してやることで、『事故の起こる危険(リスク)』をコントロールすることが出来ると思うんだよ。・・・博打ではなくてね。ISO規格はそのための『国際的な知恵』というか『膨大な経験則』をエッスセンスにした塊とでも言うかな」

「『年寄りの言うことは聞くもんだ』みてぇな?『それ』を参考にすることで、『事故に至る危険』を無くすっつーか、確率を下げるっつーか」

「管理する、コントロールするという話だな」

「んじゃぁ、ISO雑誌の特集記事なんかも『ISOで危機管理を充実』ってのが正しいんで?」

「正しいかどうか知らないが、意義としてなら、そっちの方が余程マトモだと思うよ」

「随分、地味な特集っすけど」

「そこがツラいところだろうなぁ。商業誌だから顧客の眼に止まらないと話にならないし」

「でも実益がありゃぁ、見てくれる人が居るんじゃねぇんですかねぇ」

「どうかなぁ。ISO専門誌なんかは所謂『ISO屋』さんが読んでる場合が多いから、耳障りの良い総論的な話や分析手法の類なら食付きもいいのかも知れないがね。細かい実務の話をしても『?』なのかも知れん」

「結果として事故が起きてりゃぁ総論も分析もフッ飛ぶんすけどねぇ」

「私もひとの事ぁ言えないが、実はこの国には『実務として事故が防止出来る、本当の環境管理』を考えて実行している人間が極めて少ないんじゃないかな。最近、そう思うよ。」






ISO流「コピー用紙の削減」 その3【方針と考慮】

「・・課長、ひとつ聞いてもいいっスか?」
目高が恐る恐る聞く。
「なんつーか、そのぉ・・・今やってるコレって、意味あるんスかねぇ?」

「というと?」
鯉村が聞き返す。

「つまり・・・その、『上』からの指示は『コピー用紙を削減』することでしょ?だったら、何もこんなメンドくせーコトしなくたって、なにかこう・・ポン!と改善すりゃぁいいじゃないんスかねぇ。実際、これで結果が出るのかどうか不安なんスけど」
目高は自分で出した紙について、コピー機に付けられた『用途記録表』に記入をしている。この作業も4日目に入っているし、そろそろ面倒になってきたとしても不思議はない、と鯉村は思った。

「ハッキリいうと、だ」
ウホン!と、もっともらしく鯉村が咳払いをする。
「コレをやったからと言って、必ずしも削減になるとは限らない

「ええっ!」
目高が声を上げる。
「いやいやいやいや、それじゃぁ意味無いっしょ!」

「・・・課長が言う『必ずしも』というのは別に『出来ない』って話じゃないさ」
船田が横から口を出す。

「え!え?じゃぁ、どっちなんです?」
キョロキョロと目高が船田と鯉村の顔を見比べる。

「だからさ。調査してみた結果、『何処にも削減の余地がありませんでした』って話もありうるってことだよ」
船田は手をとめて目高の方に向き直った。

「・・・いいんですか?そんな結論で」
鮎沢も加わってきた。

「その時は・・・まぁ、その時だろうな」
鯉村が笑う。

「いい加減だなぁ・・・」
目高が呆れたように言うと、船田は、
「別にいい加減じゃないさ。そういう結論もあるって話だ。もっとも、今回の目標は1割削減だから、タネを明かすとそれほど難しい話じゃないんだよ。多分、課長の腹積もりでは『何と何をすれば』というストーリーが見えてるんだと思うよ」
と言って、鯉村の方を見やった。

「おいおい、タネをバラすんじゃないよ。折角の教育なんだからさ」
鯉村は苦笑いを浮かべる。

「じゃぁ、素直に『それ』をやればいいんじゃぁ・・・」
目高が頬を膨らます。

「・・・何でそうしない、と思う?」
鯉村が問いかける。

「え・・・ひょっとして・・・」
少し間を空けて、鮎沢が答える。

「ひょっとして?」
船田が鮎沢を促した。

『再発防止』ですか?」
「流石、察しがいいですね」
鯉村は、うんうんと大きく頷いた。

「え?再発防止?何が?」
目高には、まだ良く分かっていないらしい」

「鮎沢さん、説明・・・できますか?」
鯉村は鮎沢に話を振った。

「・・・合ってるかどうか自信はありませんけど・・・」

「いいですよ。もし、私の思いと違っていたら訂正します」
鯉村は手で、『どうぞ』と鮎沢に合図した。

「この前、自分たちの調査したコピー用紙の『使う枚数』と、実際の『使った枚数』の間には大きな差がありましたよね?そしたら、今回もし何か対策して1割の削減を達成したとしても、その他の『管理していない要因』が膨らんだりしたら、結果として『使った枚数』が『何も変わらない』ということにも成りかねない・・・でいいのかしら?」
自信なさそうに鮎沢が鯉村の方を見る。

「どうです?目高君はそれで理解できますか?」
鯉村が目高に尋ねる。

「ええ、それなら分かりますけど」
目高が軽く頷く。

「では、その他にはどうでしょうか?今回、こんな面倒くさい方法を執ることで利点は?」
鯉村の眼は船田の顔を捉えている。

「・・・何で、そこでボクを見るんです?いいですけど」
半分笑いながらも、船田がイヤそうに言う。

「大丈夫ですよね?」
鯉村が念を押す。

「知りませんよ?『私の想像』ですからね。つまりね、何故、今回『コピー用紙の削減』という話になったのか、それはちゃんと覚えているかい?」
船田が目高に問いかける。

「そりゃぁアレでしょ?コピー用紙の単価が高くなるとかで」
何を今更・・・と、目高が答える。

「だろ?ならば、例えば『何か対策』をして、とりあえず『紙は減った』としようか。ところが『それ』によって、他の経費・・例えば文書を電子化させることでデータを格納するサーバの負担が増えすぎて『サーバの増設』とかになったら・・・どうなる?」
やはり船田は良く分かってくれている、と鯉村は思った。

「サーバの増設、ですか・・・。それは痛いですね」
鮎沢は元々労務で電算を担当していたから、身に覚えがあるのだろう。
「一口に『増設』って言いますけど、サーバ増設はそんなに簡単じゃありませんからね」

「そうなんスか?」
目高が聞き返した。

「目高君は知らないだろうけど大変なのよ?今のサーバはキャビネットに1段づつ『タンスの引き出し』みたいに差し込んで増設する方式だから、余分なスペースがあればいいけど、なかったら外側ごと買うしかないの。すると、冷蔵庫1台分くらいのスペースが必要になるわ。それに、バックアップ用の無停電電源装置も容量が不足するから、それも購入になるし、ソフトもOSだけじゃなくってネットワーク用のものやウィルス対策ソフトだの何だのって凄いお金が掛かるんだから!」
鮎沢は主婦なだけあって、『お金が掛かる』という感覚に敏感だ。

「へぇ・・・そんなんスか。だって皆んな、気軽にペーパーレス、ペーパーレスって言うから、『紙さえ減ればいいんだ』って思ってたっスけど?」
目高は眼を丸くした。

「まぁな。迂闊に『紙』を減らすと、逆にコストUPになるってこともあるのさ。課長は『そうまでして減らす意味はない』って思ってんじゃないかな?」
船田が鯉村に視線を送る。

「船田君が言ってくれた通りだよ。我々はどうしても『紙を減らせ』と言われると『紙だけ』に注目してしまうけど、本来の目的は『経費の抑制』なんだから、会社トータルでの経費が上がってしまったら全くの無意味なんだよ。だったら、素直に紙を使った方がマシじゃないのか・・・というのが私の考え方なんだ」
鯉村はそう言ってメンバーの顔を見渡した。
「・・・分かるかな?」

「ええ、つまりさっき課長が言った『削減になるとは限らない』というのは、『紙を使った方がマシ』という結論もありうるって事でしょうか?」
『お金』という価値観でなら、鮎沢も理解しやすいのかも知れない。

「充分にあるだろうね。というか逆に『これまで以上に紙を使った方が安上がり』という可能性だってあるのさ」
船田は席を立ち上がってこちらを向いていた。

「んでも、そんなのって、どーやって見極めるんです?」
目高が船田に尋ねる。

「それを見極めるには、だ。つまるところ・・・」
船田が意味有りげに目高の方を見てニヤリと笑う。

「・・・調べる他、無いっつー・・話っスか」
はぁ、と目高がため息をついた。

「なーんか・・・結局、一周してきただけって感じですね」
鮎沢が独り言のように言った。

「でもないさ。今日の話は今日の話で充分にISO規格とも関連がある話だ」
船田は再び着席していた。

「え?何処がっスか?」
目高がビックリしたように聞く。

「まず、課長の『経費はトータルで考えるもので単純に紙だけ減ればいいというものじゃない』っていう主観は『コピー用紙の使用』に対する課としての全体的な方向性、『ポリシー』と言える。つまりISO14001でいうところの『環境方針』に相当するんだよ」
船田が解説を始める。

「そして、この『方針』は今、構成員である我々に『周知』されたよな?」
さらに船田が続けた。

「次に『紙を減らすことでサーバ増設等、余計な経費が発生することもあるから注意が必要』というのは、『目的、目標及び実施計画』の『財務上、運用上の事項を考慮する』に相当するものなんだよ」

「へぇ・・・ISOの要求事項ってもっと『大きな枠』で囲うイメージなんスけど?」
目高はポカンとしている。

「ISO審査のことを今更どうこう言うつもりも無いけどな」
鯉村が後をつなぐ。
「彼ら審査員は環境業務の経験がないから、エネルギー管理も水質も騒音も全てを『環境』という枠でゴッチャにして考えてしまうんだよ。そのために、方針にしても目的目標にしても『全てを含んだ』形で出そう、とするんだ。だから結果として何にしても非常に曖昧なものが出来上がるんだよ。それでは何の役にも立たないのさ」







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